いのち延ぶ万燈籠に火を加へ
宮柱丹を火のいろに万燈会
神の火の万燈籠にふふむ梅
冬めく夜鯉の輪切りの甘煮かな
ちちははの齢越えて日々短しや
満ちて帰る富貴の大堂のしぐれの香
しぐれ恋ふ死を急ぐごと旅つづけ
老林火咳止め飴を離さずに
咳終へて遥かな国に来し思ひ
襖絵も山重なれる雪の国
枯蔓の佛の姿して吹かれ
いのち長きより全きをねがふ寒
亜浪忌の不参みちのくより詫びる
冬籠雲多きみちのくより戻り
据ゑられし石のごとくに日向ぼこ
めつむれば山河きらめく冬籠
門川を流れ武蔵野の落葉なり
花茶垣声掛け易く訪ひ易く
しろがねの光茫長く小春了ゆ
亜浪忌の寄書の名も減りにけり
一汁一菜葉を落す木のふえてゆく
枯木揺れてもしづけさの乱されず
寒き夜を山のけものも覚めをらむ
大き湖据う遠州の空つ風
明暗の波の綺羅また鴨の数