朝日直線よべ吹雪たる赤松に
雪山へ狐の駈けし跡いきいき
天仰ぎ炭焼きの呑む寒卵
湯婆も母の体温とはならず
風邪の妻長びけば起き長びかす
雪眼に沁み風は山より一筋道
キリストに窓越えせまる雪の量
爐に足を焦がすな雪は積むばかり
昏くおどろや雪は何尺積めば足る
雀色時雪は光輪持ちて降る
復活や深雪に墓の抱かれて
聖十字かこむ黒外套四人
雪の水車ごつとんことりもう止むか
外へ燈を洩らさぬ冬に入りにけり
寒雁の翅に暮色は重からずや
冬田より夕日の鴉上田城
荷を下す橇馬つつむ汽車煙
藁打つ音はじまる雪はまだやまず
泣くごとく渓流に燈を冬山家
茶の花の蘂の雨粒暮色めく
からからと車行き山枯れにけり
切干大根ちりちりちぢむ九十九里
麦蒔くや海流の縞に眼をやすめ
紙漉の薄紙かさぬ雪の界
貰ひたる鴨をしたたる雨雫