雪の道村をつらぬきもの解けず
山々は星をかぶりて夜紙漉
憂ひあれば憂ひのつやに夜紙漉
跡つぐ子槽を並べて夜紙漉
十日夜星殖え子らに藁鉄砲
十日夜の餅にぬくむに炬燵賜ぶ
冬の夜の坐り直して風聞くや
鵜が棲んで巌はいよいよ冬の相
雪国の夜のために爐は残りたる
雪の底年代記即凶作史
雪積むや沢内甚句繰返し
辻曲ればかまくらの灯の招くごと
降る雪にしんこの犬コ四肢張れる
雪の香の犬コ小筥に旅鞄
生姜湯に薄汁をして更けしかな
日向ぼこ佛掌の上にゐる思ひ
火を埋む人押しのけず生ききたりき
塩辛きうどん雪暗募りけり
透くばかり雪嶺いまは天のもの
神集ふ国の二夜の星の数
日向ぼこ神の集ひも日向ならむ
佐久佐女の森の落葉の紅一枝
十一月吉備路は塔と丸き山
顔見世に高野の僧も参ずるか
あをぞらは融通無碍よ日向ぼこ