わが書架へ午後は冬木の影二本
眼がつねに涙うるみ冬籠
ひときても灯をたよりなるさむさかな
濁る冬日土手に鴉をつどはしむ
河口かなし冬枯の波しろく置き
河原鴉冬枯にゐてつひに鳴く
冬日得てぐみ朱ければ海忘れ
冬雲雀雲居の富士の白妙に
霜柱墓標の白木くもらせぬ
銀杏聳ゆおのが落葉を見下して
枇杷の花夜はそくばくの星かかげ
物書く手あたためくれぬ冬日差
雀見てなぐさむさむき日を籠り
夕日いちめん枯野真中の木も枯れて
雪嶺を庭先にせり兎飼ふ
鶏頭を抜けばくるもの風と雪
花八つ手貧しさおなじなれば安し
寒落暉讃ふるごとく船煙
夜焚火の火中の薪の透きにけり
降る雪の川の奔流見せず降る
大寒や机に寄りし胸しびれ
雪の傘身を容るるやすきくらさあり
一としきり落葉して木はまた日を浴ぶ
昼酒の唄や枯野へ筒抜けに
風邪の妻遅きわが餉に待しをるも