和歌と俳句

寒さ

いくばくの寒さに耐ゆる我身かも 虚子

貨車寒し百千の墓うちふるひ 波郷

ジャズ寒き家並の揃ひ来りけり 波郷

また人の惜まれて死ぬ寒さかな 万太郎

ひときても灯をたよりなるさむさかな 林火

飯食うてしのぐ寒さや昨日今日 たかし

くれなゐの色を見てゐる寒さかな 綾子

いろは仮名四十七文字寒さかな 万太郎

分別も律儀も寒き世なりけり 万太郎

なにがうそでなにがほんとの寒さかな 万太郎

かけにくき足袋のコハゼの寒さかな 万太郎

いくたびもすわり直して寒さかな 万太郎

あたらしき筆を噛む歯の寒さかな 万太郎

東京にゐて鎌倉の寒さかな 万太郎

人の世の月日ながるゝ寒さかな 万太郎

膝にいつしのべる京の寒さかな 万太郎

池寒く主いまなし無名庵 万太郎

飛石の一つ一つの寒さかな 万太郎

燭ゆるゝときおもかげの寒さかな 万太郎

なまじよき日当りえたる寒さかな 万太郎

何見ても影あぢきなき寒さかな 万太郎

比叡愛宕この空間に寒さ凝る 誓子

顔中の皺をあつめて寒さいふ 林火