膝にいつしのべる京の寒さかな
焼芋やいまはむかしのゆめばかり
焼芋のやをら上げたる釜の蓋
目はきげん口は不機嫌冬ごもり
あさがほの枯蔓うつる障子かな
海苔の艶玉子の照りや年の暮
秒針のきざみて倦まず文化の日
蘭の葉のはなつひかりや文化の日
目のまへに山みじろがずけさの冬
無理は身の毒と知れども木の葉髪
道しばし櫻並木のしぐれかな
しぐるゝや温泉の香にまじる檜の香
短日や縁の下ゆく一流れ
たかなみのたつにまかせて日短き
道ばかりきかれ短日靴みがき
霜ふかき深谷の葱のとゞきけり
足もとにひそむ流れや山の冬
いそがしや返事かくさへ春仕度
毛氈の緋のはなやぐや年忘れ
しなひ合ふてんびん棒や年の暮
われなべにとぢ蓋女房年のくれ
またしても人のおちめや年の暮
年の暮なまじに月のひかりかな
ゆく年やあはれ霜除敷松葉