燈籠に笠のもどりしみぞれかな
極月やあかつき闇のふかきさへ
年の市提灯ひとつ燃えにけり
ふる雪のかりそめならず年用意
半生の暗き半面石蕗の花
短日やはやぽつかりといでし月
短日の石つまづけとばかりかな
水鳥や生とし生けるものゝ冬
汝もわれも凡夫の息の白きかな
息白しわれとわが袖かきいだき
葱汁は熱きほどよし啜りけり
紙屑のたまるばかりや冬籠
大阪にはや冬の雨ふり暗き
木の葉髪舞台に賭けしいのちかな
何か言へばすぐに涙の日短き
燭ゆるゝときおもかげの寒さかな
なまじよき日当りえたる寒さかな
何見ても影あぢきなき寒さかな
きさゝげのいかにも枯れて立てるかな
湯豆腐やいのちのはてのうすあかり
釣堀のわづかにのこる枯野かな
鮟鱇もわが身の業も煮ゆるかな
死んでゆくものうらやまし冬ごもり