はつ冬や萬年青の銘の翁丸
宵酉のふぜいの雨となりにけり
引つ越して来て雨ばかり石蕗の花
煮大根を煮かへす孤独地獄かな
大根つみし馬に逢ひたるだけの道
水引のうまくむすべて小春かな
越して来てみつけしものや返り花
落葉風しきりにおこる日なりけり
人ごゑを風ふきちぎる焚火かな
冬紅葉あらぬかたより日のさせる
水奔りゆくかげくらし冬紅葉
すべては去りぬしぐるゝ芝生みて眠る
短日のひかりのなかや浮御堂
人ごみにちらと影みし日短き
冬の虹湖の底へと退りけり
義仲寺のむかしのゆめの冬田かな
池寒く主いまなし無名庵
飛石の一つ一つの寒さかな
湖の蘆眠るがごとく枯れにけり
一生のきまる縁ぞとも笹鳴ける
蘭の香をめぐるあはれや冬の蠅
冬の蠅をりから火だねたえてゐて
返事してすぐには立たず毛糸編む
この橋もことしかぎりの師走かな
坂本の里の蕎麦屋の師走かな