和歌と俳句

師走 しはす

餓師走花八つ手などちつてなし 波郷

エレベーターどかと降りたる町師走 虚子

大空のあくなく晴れし師走かな 万太郎

締め忘れられて師走の古襖 草城

ゆふぞらのひかりのこれる師走かな 万太郎

病む師走何の曲にかなぐさまむ 波郷

まつほどにうす日さしくる師走かな 万太郎

病む師走わが道或はあやまつや 波郷

伊勢海老の伊勢に来てまだ師走かな 万太郎

山茶花の咲きてことしも師走かな 万太郎

玄関の竹植ゑ足せる師走かな 万太郎

ぬけなれし露次の師走の日ざしかな 万太郎

墓原に師走のもみぢ関が原 爽雨

画廊でてやがて絵が消え街師走 爽雨

街路樹の肩うつ歩み街師走 爽雨

玄関に衝立くらき師走かな 万太郎

あかあかと火の熾りたる師走かな 万太郎

師走の父大櫛末子を梳る 草田男

別の間に違ふ客ある師走かな 虚子

二時半はまだ日のうちよ町師走 立子

この橋もことしかぎりの師走かな 万太郎

坂本の里の蕎麦屋の師走かな 万太郎

退院車入りてまぎれて師走街 多佳子

買物の好きな女に師走来る 立子

街師走かがめば鶏の世界が見ゆ 楸邨

日を透す玻璃に人形師走影 みどり女