煮凝の皿にとけ込む琥珀色
口切や日の当りゐるにじり口
茶の花の新らし銀の雨が降る
朝の日の鶏舎にあまねし寒玉子
寒の雨降りまさりつゝ夜に入りぬ
見度きもの行き度き処冬籠
片づけて片づけて用日短
寒燈や又も易きに傾きて
風花やひるげともなき餅を焼く
冬紅葉美しといひ旅めきぬ
ひとりごと外は寒しと戻りくる
好きな句をそらんじながら焚火守る
毛糸編む君等は若ししあはせか
朝々のさすがに寒に入りにけり
疲れゐる身に北風はみじめすぎ
思ひ出を人に語れば啼く千鳥
溶岩の怒濤の如く時雨中
石蕗咲くや朝から少し肩こりて
笹鳴や廻廊渡る茶菓もちて
昨日よりもをとゝひよりも冬日和
長火鉢不思議に似合ひゐる書斎
来し人の時間正確日脚伸ぶ
二時半はまだ日のうちよ町師走
寒しとはこの世のことよ墓拝む