和歌と俳句

星野立子

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煮凝の皿にとけ込む琥珀色

口切や日の当りゐるにじり口

茶の花の新らし銀の雨が降る

朝の日の鶏舎にあまねし寒玉子

寒の雨降りまさりつゝ夜に入りぬ

見度きもの行き度き処冬籠

片づけて片づけて用日短

寒燈や又も易きに傾きて

風花やひるげともなき餅を焼く

冬紅葉美しといひ旅めきぬ

ひとりごと外は寒しと戻りくる

好きな句をそらんじながら焚火守る

毛糸編む君等は若ししあはせか

朝々のさすがに寒に入りにけり

疲れゐる身に北風はみじめすぎ

思ひ出を人に語れば啼く千鳥

溶岩の怒濤の如く時雨

石蕗咲くや朝から少し肩こりて

笹鳴や廻廊渡る茶菓もちて

昨日よりもをとゝひよりも冬日和

長火鉢不思議に似合ひゐる書斎

来し人の時間正確日脚伸ぶ

二時半はまだ日のうちよ町師走

寒しとはこの世のことよ墓拝む