楼門のうち明るき深雪かな
夜半さめてこの静けさや雪ならめ
桑畑の細枝のみ見ゆ深雪かな
畑中や深雪かき居る一軒家
束の間の雪なりしかど美しき
降り終る雪二三片軒庇
看護婦は朝の掃除や冬薔薇
石蕗の虻折々昼の食膳に
掃き終へし庭に落葉の浅々と
笹鳴のきてはかさかさ柿落葉
落葉する細きするどき音のあり
尻高くはね上げ小犬小春園
木の間より湧き立ち降れる落葉かな
冬木道暖かき日のさし抜けて
落葉中とび立つ鳩も静かなり
なりはひの一人異り近松忌
化粧坂うねうね冬の山裾を
堂裏の納め不動の占者
早梅に来てばつたりと日落ちたり
をし群れて餌につきゐしは今しがた
すきすきて冬木枯木の小山あり
夕日まつかに没したり磯千鳥
里神楽こと分からねど面白き
火桶抱き脊ナをかがめて山眺め