和歌と俳句

冬の薔薇

冬の日のいみじき紅や四季さうび 悌二郎

冬薔薇の咲いてしをれて人遠き 草城

よき言葉聴きし如くに冬薔薇 夜半

冬薔薇や日のあるかぎり暖かし 汀女

冬薔薇瞳によろこべりうつうつと 楸邨

病む瞳には眩しきものか冬薔薇 楸邨

冬薔薇のゆるむつぼみのまくれなゐ 草城

とざしたるまゝの明けくれ冬さうび 悌二郎

看護婦は朝の掃除や冬薔薇 立子

冬薔薇石の天使に石の羽根 草田男

冬薔薇神をおそれぬ瞳よ唇 赤黄男

故しらぬ別れとなりぬ冬薔薇 占魚

冬バラを剪りたる妻の貌消えし 不死男

夜訪ひて冬薔薇顔の近くにあり 綾子

冬薔薇をを贈られてその棘に触る 波津女

冬薔薇活く鋭き棘を水に沈め 波津女

汝が眼に映れとつぼむ冬薔薇を 綾子

月面にありあらあらと冬の薔薇 楸邨

寒さうび咲きたわまむととどまれる爽雨

折ればわがもの冬ばらと園を出る 多佳子

冬薔薇や心の富める人を敬す 立子