霰やみすでに暮れゐし石蕗のかげ
枯蘆のそら夕映えぬすべもなし
茶の花やかくて霜降り畦潰え
枇杷の葉さやけしけさのうす雪は
バスしげし大路の雪に踏みまどふ
何もせぬ夕たのしさを雪ふり来
埋火に夕刊その他つねのごと
温室の扉に師走の街遠ぞける
なにがなし冬あを草をめあてに来
冬草の濡れしにあらねみづみづし
湖氷り信濃は鯉を田に生かす
スケートのひとり朝日をほしいまゝ
湖あをく氷り冬田がたゞしたし
とざしたるまゝの明けくれ冬さうび
檸檬切りにほひはしれば風邪去りぬ
北かぜやみなすこやかに夜のまどゐ
北風の音はるかに聞けり刻経たり
乾鮭の豈うまからむ箸をとる
火も絶ちし暁のさむさに咽び醒む
冬田ゆき氷れる湖を靴に踏む
足袋はきつめざめの子らに声かくる