和歌と俳句

篠田悌二郎

急変の白波こぞり寒漁港

海天に白涛うまれ寒暮荒る

寒暮さらに埼の風声怒涛音

荒るる海よ寒夜囁く遠き声

冬の灯のホテルの外は一漁村

鶴を待つ暁闇の畦霜に白し

仰ぎ見て鶴翼くろし冬朝日

鶴舞へり遠山裾に田靄こめ

清浄に枯萩束ね塾残る

松下村塾残す一机に冬日さす

枯萩の影や門弟控への間

礼拝堂峠に小さし干大根

マリヤ死と来ます愉悦図飛ぶ落葉

殉教絵図残り墓碑なし冬の菊

風花に石庭瀧口日を残す

薬師寺へ道を冬田の畦づたひ

うすら氷の堰の芒の声ならむ

大き黒き仏ゐませり冬田尽き

風花や双塔一つ滅びてなき

視野にまず雪嶺として遠飯豊

雲一つなき雪嶺へ緋連雀

寒雪解濛々磐梯揺らめかす

浮び翔つもの杳かなり雪の浜