凍て鶴にとどく日ざしもしりぞきぬ
雨戸樋に大きな音や寒雀
電話咳して兄の出てきたり
咳の人と向ひあはせしバス込める
楽屋口水の江滝子ジャケツきて
風邪の子に日々の外出の土産もの
ひと掻きにすぐ積む落葉焚きにけり
やはらかき日ざしも時雨日和かな
汽車窓に和歌の浦あり時雨れをり
時雨るるや小原女道を掃き急ぐ
枯萩と欅の空と細やかに
供養菊持ち北風に吹かれ立つ
煖炉の灯ちろちろうつり菓子ケース
人形の手に正札や銀狐
寒くなれば篝にも立ち除夜の鐘
早梅に歩みよりゆく影法師
北風や外出の心さらになく
北風や静かな部屋に客とをり
床の間に炭斗置きて掃除かな
つつましく咳する人に煖炉もゆ
霙るるや子をかばひゆく軒づたひ
ストーヴや我が身静かに椅子にうもれ
凍蝶にかがみ疲れて立上がる