和歌と俳句

星野立子

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春待つや赤き毛氈次の間に

寒詣夜目にも白衣よごれなし

水鳥の木の間がくれに騒がしく

枯枝に小雀群れゐぬあともどる

月寒しかなしきことのつぎつぎに

降る程の落葉ならぬも亦よけれ

欅落葉こまごま埋め龍の髭

笹鳴やたしなめくるる人やさし

そへ竹のみな細々と菊枯るる

燃えそめし炉はあたたかき時雨かな

手袋をとりたての手の暖かく

竹馬の子のおじぎしてころびけり

馳けてゐる少年少女冬日和

ぶら下るごと月かかり道凍てぬ

かじかめる手にマッチすり渡しけり

ペリカンの下りゆく水や松の下

墓道となりて凍土のもの深く

足に射す冬日たのしみをりにけり

砂よけの中の日向へ寒烏

降りてまこと楽しきまどひかな

中庭の雪は静かにゆるやかに

漸くに遠山雪の景色かな

寒烏一番太き電線に

人々の黙ることあり煖炉もゆ