春待つや赤き毛氈次の間に
寒詣夜目にも白衣よごれなし
水鳥の木の間がくれに騒がしく
枯枝に小雀群れゐぬあともどる
月寒しかなしきことのつぎつぎに
降る程の落葉ならぬも亦よけれ
欅落葉こまごま埋め龍の髭
笹鳴やたしなめくるる人やさし
そへ竹のみな細々と菊枯るる
燃えそめし炉はあたたかき時雨かな
手袋をとりたての手の暖かく
竹馬の子のおじぎしてころびけり
馳けてゐる少年少女冬日和
ぶら下るごと月かかり道凍てぬ
かじかめる手にマッチすり渡しけり
ペリカンの下りゆく水や松の下
墓道となりて凍土のもの深く
足に射す冬日たのしみをりにけり
砂よけの中の日向へ寒烏
雪降りてまこと楽しきまどひかな
中庭の雪は静かにゆるやかに
漸くに遠山雪の景色かな
寒烏一番太き電線に
人々の黙ることあり煖炉もゆ