和歌と俳句

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荷車のそばに雪空仰ぐ子 碧梧桐

障子あけて雪を見る女真顔よ 碧梧桐

雪の森狐も住まぬ明るさよ 花蓑

雪をよろこぶ児らにふる雪うつくしき 山頭火

雪かなしく一人の夜となりけり 山頭火

雪の中人影の来てやがて消えけり 山頭火

あすしらぬこともをかしや雪つもる 蛇笏

暮の雪重なり着ける塀の面 石鼎

枯枝にだんびら雪の見ゆるかな 石鼎

朴の雪つみきはまつてくづれけり 石鼎

木のもとに草青々と暮雪かな 石鼎

暮雪さびし道をはづれし足跡も 石鼎

谷水に巌蔭深き深雪かな 石鼎

夕空や舞ひ下りる雪風の雪 石鼎

コート着し人のそがひや雪の道 石鼎

雪に埋れて舟水にある静かさよ 橙黄子

夕鐘のわなゝきにさめて雪の畦 石鼎

蘭にとまりし雪片動き消ゆる哉 石鼎

戸に出でし人に日南や裾野雪 石鼎

棕梠の葉の雪よりたちて日の吹雪 石鼎

くるゝ山の大雪に伏す木々の念 石鼎

埋もれて穴あく笹の深雪かな 花蓑

角燈に前後す影や雪の道 櫻坡子

山内の杉に吸はるゝ粉雪かな 喜舟

ほつれ毛に雪片ゆれてかかりけり 爽雨

茂吉
わが心 やうやく和み 雪つもる 独逸のくにを 南へくだる

茂吉
見わたしの 畑に雪降り かぎりには 黒くつづける 常緑樹の森

茂吉
水量まし ひたにごりたる Elbeの 河を満たして 雪はながるる

茂吉
ドレスデンを いでて間もなき この河の 対岸の山に 雪降りにけり

茂吉
業房に 一日こもりて 天霧し 降りくる雪を をりをり覗く

ポストから玩具出さうな夜の雪 水巴

底見えて浅き池あり雪の宮 花蓑

庵松や風添うて降る牡丹雪 石鼎

柴折戸を舞ひ越ゆ雪の見ゆるかな 石鼎

垣越に見えて過ぐるよ雪の傘 石鼎

白秋
畔は畔 田は田の型に つもりたり おもしろの雪や おもしろの雪や

厩口の三束の藁のまゝ降りこんでゐる雪 碧梧桐

まどかにも降る雪片や夕まぐれ 石鼎

棟の雪すこしよごせし鴉かな 石鼎

いつの間に踏みまよひたる深雪かな 石鼎

霊膳の湯気の細さや夜の雪 水巴

雪の音の幽けさに独り茶漬かな 水巴

遅月にふりつもりたる深雪かな 蛇笏

降る雪に空打ち見ては傘の人 石鼎

午ちかく雀なき出し深雪かな 石鼎

生死の中の雪ふりしきる 山頭火

雪の夜を訪はれて灯明うしぬ 石鼎

雪つむや荒瀬が中のかかり枝 爽雨

送り出す人影雪に浮びけり 月二郎

ひとはふり塵ののりたる深雪かな 禅寺洞