信心の鉄鎖も雪に埋もれて 誓子
殺生石雪もこの世のものならず 誓子
みちのくの馬に湯気立つ雪に濡れ 誓子
豪雪に寝て髪の毛が白くなる 誓子
降る雪に貝ふく頬をふくらませ 誓子
髭のびて厚き屋根雪木影置く 不死男
磐梯に雪来し今日の天守閣 悌二郎
深雪なり営みの灯も次ぎて消え 悌二郎
カーテンの隙にわづかの夜の雪 悌二郎
屋根の雪落ちて地面に激突す 誓子
火を継いで山菜の村雪がくる 不死男
北国を銀漢駈けて雪がふる 不死男
降る雪が踊る櫟を降りつつむ 波郷
雪降れり時間の束の降るごとく 波郷
雪はげし木立悉く傾けば 波郷
降る雪に病む者一指だに触れず 波郷
雪片の大いなるもの同速に 波郷
馬の目に雪が駈けこむ北の国 不死男
針傷をいくたびも舐め雪降れり 双魚
雪の小田びろうどびかりさしにけり 青畝
限度まで庇の雪の乗り出せり 誓子
忽ち白近江の雪の域に入る 誓子
上雪を除け縄文の雪を舐む 静塔
ぬばたまの黒曜石の呼びし雪 静塔
馬首を釘付け積雪をいぶかしみ 静塔
百合の根を蹄は知らず雪の馬 静塔
大雪を冠りて木々も低頭す 誓子
雪の七堂雪の棟雪の棟 誓子
紙漉の窓の楮の丘に雪 爽雨
雪の底年代記即凶作史 林火
雪積むや沢内甚句繰返し 林火
降る雪にしんこの犬コ四肢張れる 林火
雪の香の犬コ小筥に旅鞄 林火
雪踏みてすとんと脛を没しけり 青畝
トラックに積もれる雪の厚衾 誓子
北海の幹線雪の狭軌道 誓子
雪降らしおのれも白き天狗山 誓子
雪の原中仙道の家灯る 青畝
雪五尺踏むすべ知らず平泉寺 青畝
金鳳や衣笠の雪うすうすと 青畝