和歌と俳句

秋元不死男

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雪虫を鞭打つ風の桑の影

村々の墓の茶碗にがふる

屋根雪の重さ火責の薬缶ひとつ

リフト一路宙吊り婆に樹氷浮く

ふるに青の愁ひの病馬の湯

茂吉ねむるに童の墓刺さり

消しゴムさみし炬燵の中の暗い足

芽のやうな胎児に柚子湯湧きにけり

ちらちらと箸ばさむ河豚山眠る

短日のよよと軸焼く燐寸の火

焼栗の冷ゆれば重し翁の忌

点眼に額みどりめくクリスマス

茶の花や骨湯の好きも母ゆずり

行く年の湾にただよふ荒筵

航跡の白さささくれさへ冴ゆる

たらたら飛ぶ所有の冬鴎

寝酒熱うせよ乾び鳴く鶏と犬

母の恩枯菊の惨うつくしき

ガスの穂を手風で立たすかな

しろじろと父母の齢や雪嶺昏る

髭のびて厚き屋根雪木影置く

島なれや穹円に張る冬桜

水仙持つて沖辺を見やる島童女

返り花享年三鬼へあと一年

戦後の鱈鹹しまだ見る獄中夢