今日はしも柚湯なりける旅の宿 虚子
柚子湯や日がさしこんでだぶりだぶり 鬼城
柚子湯出て身伸ばし歩む夜道かな 久女
冬至湯の煙あがるや家の内 普羅
吾子ひしと抱きて柚湯にひたりけり 淡路女
吾子はをみな柚子湯の柚子を胸に抱き 青邨
月あらむ櫺子明りを柚子風呂に 亞浪
残る日の柚子湯がわけばすぐ失せぬ 秋櫻子
柚子湯して柚子とあそべる独りかな 貞
はやばやとはだへを洗ふ柚子湯かな 草城
まどろみて待つや柚子湯にゐるひとを 草城
病體を拭いてもらひぬ柚子湯もて 草城
うれしさよ柚子にほふ湯にずつぽりと 草城
柚子湯出し顔つたつやと古女房 草城
柚子風呂に赤子を沈め北がみへ 鷹女
芽のやうな胎児に柚子湯湧きにけり 不死男
柚子湯出て老の顔なる汗やまず 爽雨
みとり女の肌拭きくるる湯に柚子よ 爽雨
風呂の柚の歓喜の一つ背へまはる 爽雨