たれ彼れの炉辺のひざなる仔犬かな
除夜の鐘筑紫の人が来てとまる
裏みちの野路にも灯かげ酉の市
おち葉掃かずしぐるゝ庭の二日ほど
毛糸あみ逞しき子の身のものを
鴨の岸鳰ははなれてくゞりゐる
夜半さむる習ひがかなし北荒ぶ
凍土にけさ掃く塵のすこしあり
寒木瓜や先きの蕾に花移る
書も読まず幾日足袋もつぎ終へず
兎ゆきしあとのみ散りて深雪なり
生きて還る犬抱きて炉にくつろげよ
炬燵嫌ひながら夫倚る時は倚る
柚子湯して柚子とあそべる独りかな
案内せむ丘などあれど今日さむく
師へつとの時雨に買ひぬ磯ざかな
洗ひ積む大根いづみ溢れをり
真青にわらび煮て風邪忘れけり
小春の鎌倉きつと好きでせうこの空も
返り咲くあるも焚きけり夫の朝