桔梗や湖上に雨は降りいでぬ
花蕎麦の道のぼりゆく仔馬かな
水音に別れて虫の原となりぬ
瀬戸うちの帆が見ゆるなり茸狩
紺青の空や野分の戸をあける
独り居のうれしき日なり鵙をきく
鵙のこゑ片づけものゝ小半日
秋雨のバス待てば疾く暮れにけり
声はげむ夜学ききつゝ栗をむく
霧の夜の炉辺にもどゐす若人は
りんだうの嶮しくなりて霧はれぬ
頂の小屋のりんだう花いまだ
赤とんぼ沢のキヤムプが見えてゐる
穂高岳秋たつ空の紺青に
ひたそよぐ萩むら白く驟雨くる
降りいでし音に覚めをり秋の蚊帳
衣干して栗にくる子をいましめぬ
門掃きて今日こそ晴れめ鵙のこゑ
台風の雄たけびの戸に髪結へる
野路をくるバス待ちをれば渡り鳥