身仕舞や縁にいたはる菊にほひ
吾子かへるあけの蜩に起きいでむ
かりのめの杖もたのしく山の月
男体も湯の湖もとざし夜霧来ぬ
鵙が来ぬ庭掃くさへもたのしくて
秋ざくらばかりの庭の主婦若し
戦況ニュースきく膝触るゝ夜寒かな
戦死とぞ知りぬ十月となりし今朝
あきかぜの朝の門あくるはいつもわれ
日射しつゝ霧ある朝二三日
鵙たけるのみの静けさ爪をきる
いかりあり言はざる堪へに昼の虫
虫の闇ふかしこの家に住みし月日
軒に熟れあけびは望の供へもの
かまつかはも少し燃えよ吾子かへる
菊の香や佳節を想ひ母をおもふ
菊の障子明るく菊の名はゆかし
菊の高貴われら許りのおもひかな
噴井あり黄菊のかげも井をこぼる
葉けいとういつまで燃えてとり残す