和歌と俳句

あけび 通草

日おさへの通草の棚や檐のさき 子規

老僧に通草をもらふ暇乞 子規

鳥つついて半うつろのあけび哉 漱石

烏飛んでそこに通草のありにけり 虚子

むらさきは霜がながれし通草かな水巴

駅に迎ふみやげの籠の通草かな 石鼎

ほのぼのと紫したる通草かな 石鼎

大空にそむきて通草裂け初めぬ かな女

ぞろぞろと通草の種を舌に出す かな女

しら雲のなごりて樺に通草垂る 蛇笏

樹の栗鼠に蔓の鴉は通草啄む 蛇笏

軒に熟れあけびは望の供へもの 

貰ひたる通草つめたし霧に濡れ 蕪城

負籠の通草採る子らつづき来る 蕪城

霧はげし通草したたか得てかへる 蕪城

主人より烏が知れる通草かな 普羅

茂吉
あけびの實 うすむらさきに にほへるが 山より濱に 運ばれてくる

茂吉
あけび一つ 机の上に 載せて見つ 惜しみ居れども 明日は食はむか

茂吉
あけびの實 我がために君は もぎて後 そのうすむらさきを 食ひつつゐたり

主治医出勤白衣の膝に通草提げ 波郷

通草貰ひて楽しと思ひ憂しと思ふ 波郷