和歌と俳句

菊人形

睫きもせぬに鬼気あり菊人形 龍之介

怪しさや夕まぐれ来る菊人形 龍之介

菊人形を崩せしあとの空地かな 風生

人形がかざしてゆるる笠の菊 秋櫻子

人形の咲満ちたりし黄菊かな 青畝

菊人形景色の芒ほうけたり 風生

菊人形たましひのなき匂かな 水巴

山深きところのさまに菊人形 草田男

出来てゆく菊人形の裳かな 立子

夜風たつ菊人形のからにしき 蛇笏

菊人形目張りいさゝか濃かりけり 万太郎

うづくまつたる軍兵も菊人形 万太郎

菊あつく着たり義経菊人形 青邨

うつくしくつめたき顔や菊人形 麦南

菊人形泣き入る声のなかりけり 麦南

泣いて匂ふ白き因幡の菊うさぎ 不死男

菊の曾我五郎が先に袖枯らす 不死男

猪口才や忍者の小菊宙に咲き 不死男

興行の菊人形の美少年 静塔

真夜中の菊人形は語らふか 静塔

頼りなき菊人形と別れけり 不死男

菊人形通ふ夜道をなしにけり 静塔