雫かと鳥はあやぶむ葡萄かな 千代女
黒きまで紫深き葡萄かな 子規
葡萄の種吐き出して事を決しけり 虚子
降り出せし雨に人無し葡萄園 虚子
葡萄口に含んで思ふ事遠し 虚子
葡萄噛んで秋風の歌を作らばや 龍之介
くぐり摘む葡萄の雨をふりかぶり 久女
葉洩日に碧玉透けし葡萄かな 久女
葡萄暗し顔よせ粧る夕鏡 久女
朱唇ぬれて葡萄うまきかいとし子よ 久女
南方に曲江の景や葡萄園 橙黄子
葉かげして暗き色よき葡萄かな 橙黄子
雨に剪つて一と葉つけたる葡萄かな 蛇笏
更くる灯や葡萄の疵の生める露 花蓑
山葡萄這ひのりもぎぬ蔓ながら みどり女
紅葉せし葉につゝみけり山葡萄 みどり女
葡萄はこぶ大きな桶のみな古び 素十
寂しさに葡萄を握る月夜かな 草城
月さしてむらさき煙る葡萄かな 草城
葡萄棚洩るる日影の微塵かな 茅舎
亀甲の粒ぎつしりと黒葡萄 茅舎
水満てし白き器に葡萄かな 茅舎