釣人のちらりほらりと花野道
釣針をひさぐ一つ家花野道
秋の水湛へし下に湯壷かな
頬白や雫し晴るる夕庇
頬白やひとこぼれして散りじりに
露の玉大きうなりぬ鵙猛る
猛り鵙ひうひう空へ飛べりけり
御空より発止と鵙や菊日和
下り鮎一聨過ぎぬ薊かげ
蜩や早鼠つく御仏飯
蜩に十日の月のひかりそむ
蚯蚓鳴く六波羅密寺しんのやみ
行楽の眼に柿丸し赤や黄や
葡萄棚洩るる日影の微塵かな
亀甲の粒ぎつしりと黒葡萄
水満てし白き器に葡萄かな
紅葉谷の上に巍々たり御本山
石垣に固めし院の紅葉かな
草花やはしりがきする水塔婆
梵妻や芋煮て庫裡をつかさどる
芋腹をたたいて歓喜童子かな
八方を睨める軍鶏や芋畑
芋の葉を目深に馬頭観世音