和歌と俳句

川端茅舎

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

の葉と露の葉と相触れてをり

刀豆も蟷螂も日々のびて行く

白露も土塊もわかず貝割菜

月出でしベンチに露の新聞紙

もおどろき我もおどろきぬ

本門寺野分に太鼓打ちやめず

野分跡暮れ行く富士の鋭さよ

の顔目鼻正しく現るる

曼珠沙華真赤で稲荷鮨食べる

虫の音の身に近ければいとほしみ

黄鶺鴒飛ぶ瀬を竹の皮走り

芋畑狼藉と月照りこぼれ

かなかなの大音声や本門寺

自然薯の花清貧とにはあらじ

叢の露の大石息づきぬ

朴を打つ秋雨手裏剣の如く

猛り裂けし生木の匂ひ甘

鉦叩また絶壁を落ちし夢を

金剛の露に蟷螂斧上ぐる

練馬野の大胆に真つ白に

大銀杏黄はめもあやに月の空

かなかなや芭蕉廓然たる未明

の盾芭蕉広葉に隠れ栖む