和歌と俳句

杉田久女

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葉鶏頭のいただき躍驟雨かな

葉鶏頭に土の固さや水沁まず

草の花靡くところに井戸掘らん

穂に出でて靡くも哀れ草の花

露草や飯噴くまでの門歩き

草むらや露草ぬれて一ところ

花蕎麦に水車鎖して去る灯かな

花蕎麦や濃霧晴れたる茎雫

浅間曇れば小諸は雨よ蕎麦の花

聖壇や日曜毎の秋の花

好晴や壺に開いて濃竜胆

竜胆や荘園背戸に籬せず

竜胆や入船見ゆる小笹原

露けさやうぶ毛はえたる繭瓢

青ふくべ地をするばかり大いさよ

台風に傾くままや瓢垣

枯色の華紋しみ出しかな

唐黍を焼く間待つ子等文恋へり

知らぬ人と黙し拾へる木の実かな

髪よせてむき競ふ燈下かな

甕たのし葡萄の美酒がわき澄める

くぐり摘む葡萄の雨をふりかぶり

みがかれて櫃の古さよむかご飯

蔓起せばむかごこぼれゐし湿り土

むかごもぐまれの閑居を訪はれまじ

菊の日に雫振り梳く濡毛かな