葉鶏頭のいただき躍驟雨かな
葉鶏頭に土の固さや水沁まず
草の花靡くところに井戸掘らん
穂に出でて靡くも哀れ草の花
露草や飯噴くまでの門歩き
草むらや露草ぬれて一ところ
花蕎麦に水車鎖して去る灯かな
花蕎麦や濃霧晴れたる茎雫
浅間曇れば小諸は雨よ蕎麦の花
聖壇や日曜毎の秋の花
好晴や壺に開いて濃竜胆
竜胆や荘園背戸に籬せず
竜胆や入船見ゆる小笹原
露けさやうぶ毛はえたる繭瓢
青ふくべ地をするばかり大いさよ
台風に傾くままや瓢垣
枯色の華紋しみ出し瓢かな
唐黍を焼く間待つ子等文恋へり
知らぬ人と黙し拾へる木の実かな
髪よせて柿むき競ふ燈下かな
甕たのし葡萄の美酒がわき澄める
くぐり摘む葡萄の雨をふりかぶり
みがかれて櫃の古さよむかご飯
蔓起せばむかごこぼれゐし湿り土
むかごもぐまれの閑居を訪はれまじ
菊の日に雫振り梳く濡毛かな