和歌と俳句

蕎麦の花

刈りさして廬にしめやかやそばの花 蛇笏

花蕎麦に水車鎖して去る灯かな 久女

花蕎麦や濃霧晴れたる茎雫 久女

浅間曇れば小諸は雨よ蕎麦の花 久女

八月の雨に蕎麦咲く高地かな 久女

千樫
この頃のあかとき露に門畑の蕎麦の白花かつ黒みけり

花蕎麦をさびしき時は思ひ出よ 野風呂

蕎麦の花にも少年の日がなつかしい 山頭火

またふるさとにかへりそばのはな 山頭火

そばのはな、ここにおちつくほかはない 山頭火

墓がならびそうしてそばのはな 山頭火

家がとぎれてだんだんばたけそばばたけ 山頭火

提灯に道べは蕎麦の花ばかり 淡路女

白じろと風わたるなり蕎麦の花 淡路女

啄木の碑蕎麦の花明り 青邨

そばの花山傾けて白かりき

南部富士白き雲かけそばの花 青邨

花蕎麦の道のぼりゆく仔馬かな 

花蕎麦や提灯しかと平湯越 野風呂

霧ぬれの飛騨山坂の蕎麦の花 野風呂

道の下いく道見ゆる蕎麦の花 野風呂

蕎麦さきて機影あしたの雲にみゆ 蛇笏

秩父路や天につらなる蕎麦の花 楸邨

遠山の奥の山見ゆ蕎麦の花 秋櫻子

蕎麦の花咲きそろひたる畑あれば蕎麦を食はむと思ふさびしさ 茂吉

花蕎麦や雲を千分けて日の霽るる 草田男

花蕎麦や日向の山はわが山のみ 草田男

戸隠をかくす雲烟蕎麦の花 林火

降りいでし月下ほのかに蕎麦の花 秋櫻子

踵揃へて上げ下げ語る蕎麦の花 草田男

詩念払ひて細事為さんと蕎麦の花 草田男

蕎麦咲けり雲水峡をいできたる 秋櫻子

蕎麦の花下北半島なほ北にあり 楸邨

そば咲くや姿を作る和言葉 静塔

雨降やそばの花にて消ゆる雨 静塔