鮎釣ののぼるを阻み滝かゝる
蝸牛のあとしろがねに巻芭蕉
稀にして朝日を拝む栗の花
手賀沼の沼尻水漬く梅雨の雲
瀬の岩に雪の下咲き滝なす瀬
をだまきや家を雲間に峠口
雲行きてをだまきの花も家もなし
神輿振凌霄花の垣を撓めたり
向日葵が咲くのみ運河廃るるか
地に居りし蝉が木に鳴く朝ぐもり
まろび寝や簷のあはひに百日紅
医学の徒我もと硯洗ひけり
野川ゆく舟あり蓮に漕ぎかくる
廃工場人は見ざれど蓮咲けり
ひるがへる芭蕉の葉より家軽し
野萩咲き清瀬療舎の標立つや
野萩咲き低い山ひとつ雲を脱ぐ
台風の空飛ぶ花や百日紅
秋祭漕ぎ近づきて網打てる
切通し暮れつゝせまる曼珠沙華
吊橋や百歩の宙の秋の風
曼珠沙華あらしが残す瀬の濁り
月の出の嶺はたひらに四囲の山
三日降れば世を距つなり秋の雨
降りいでし月下ほのかに蕎麦の花