老桑の瑞の芽立や春祭
桑の根のすみれの影や春祭
廃船の磯を椿のかゞやかす
梨咲くといまの心を支へをり
遅れしも芽立きそへり雨蛙
朝寝せり蒲公英の絮天に舞ふ
べたべたに田も菜の花も照りみだる
江の奥に防波堤置く松の花
ぜんまいの葉をひろげたる草の丈
ぜんまいも萩の若芽も草深し
峡の瀬か若葉か日影躍れるは
峡に飛ぶ燕のせ来つ早瀬波
扇の芝青むを過ぎて人知らず
繊き靴脱ぎそろへあり初夏の蝶
弥陀の前やがて舞い去る初夏の蝶
台壇に濁世の銭と丹の躑躅
落椿とゞめず椿咲きつぐに
石に鶸楓くれなゐの芽を解きぬ
魚板吊り僧房柿の若葉せり
藤咲いて背合せに佛立ちたまふ
野の窪の木立匂ふは藤咲ける
寧楽山は藤咲けるなりくもれども
古株の牡丹かくるゝ畑つもの
木蓮のこぞる築土に行あたる