和歌と俳句

秋の雨

秋雨や面輪暮れゐる傘の下 草城

塔頭の鐘まちまちや秋の雨 茅舎

秋雨や敷居の上の御燈料 普羅

秋雨や葛這ひ出でし神の庭 普羅

足袋はいて足のぬくさや秋の雨 播水

秋雨や田上のすすき二穂三穂 蛇笏

秋雨や禮容客におのづから 蛇笏

秋雨や温泉の香のつきし茗荷汁 茅舎

秋雨や真砂の中の潦 泊雲

ふところに文あたゝかし秋の雨 かな女

蓑を着て迎への舸子や秋の雨 野風呂

舟棚に味噌の小壺や秋の雨 野風呂

苫舟のくらきに坐り秋の雨 野風呂

秋雨や藻刈すみたる水の上 水巴

秋雨や漆黒の斑が動く虎 水巴

水脈引きて釣船いそぐ秋の雨 秋櫻子

高き木のそよぎみゆるや秋の雨 万太郎

大魚籃ひきあげられて秋雨のふる 山頭火

秋雨の背の子は仰ぐ傘の裏 虚子

破れたる網に蜘居る秋の雨 虚子

秋雨や朴を前なる大二階 花蓑

秋雨や大きく暗き納屋の中 風生

萩くぐる秋雨傘を傾けて 風生

秋雨の客珍しや百花園 風生

山水にさす傘や秋の雨 かな女

白蝶の弱く落ち来ぬ秋の雨 かな女

お台場に虎杖しげり秋の雨 青邨

電車待つゆきももどりも秋の雨 汀女

秋雨の夜の轍のつづきたる 汀女

秋雨に濡れてかわける砂丘かな 虚子

この町の半鐘ひくしや秋の雨 立子