和歌と俳句

長谷川かな女

子の秋や菊あげ拝む観世音

虫籠を残暑の枝に吊りはなす

半月に一人帰りぬ呆として

野分の灯たづぬる人にまたゝけり

碓氷の灯花野の珠とつゞり見ゆ

このあたり母は坐りしちゝろ啼く

桔梗に知るよしもなき微笑かな

花蓼や去年と同じふ石に咲く

ぬかご拾ふ子よ父の事知る知らず

蔓の中に碑は濡れゐたり爽かに

送らるゝ路々秋の暮れにけり

霊棚に仕ふるひとりふたりかな

紅提灯三つ四つの人通り

たちいそぐ薫香に星の契かな

秋草の一つは消えし燈籠かな

秋の灯に寄りてみたりの家族かな

虫とんでそのまゝ消えぬ月の中

うす雲のたゞなかにして盆の月

門くゞる家の上なり後の月

まよひ猫飼ひて野分の母と子と

ふところに文あたゝかし秋の雨

秋時雨忽ちにして松濡れし

秋薊しどろの水に浸り居る

払ひきれぬ草の実つけて歩きけり

稲の日や子につき歩くぬくぬくと