和歌と俳句

長谷川かな女

秋近し黄な斑出来て葉鶏頭

招かれて祭の店に並びけり

さし汐に青簾をあげし二階かな

灯のしたに見知らぬ鳥の瞳涼し

昼寝して宇治と思ひし我家かな

一つある窓塞がりて衣紋竹

市人恋うて街歩くなり絹袷

褪せ色のものなど縫うて夏籠りぬ

山見えぬ窓をしめたる梅雨かな

夏の露我があとに草起きも得ず

母寝れば夏虫に膝くづしけり

簾の中に面照る人や夏の雲

大松の夕日見なれし麦の秋

茄子の藍に染まりし膝をかくしつゝ

痩せし頬に五月の冠たゞしけれ

二人ゆく五月の路や水近し

槐の下に祭の人を見る子かな

雷近くなりし庇の楢大樹

夏山の重なりうつる月夜かな

石棺の上の上なる若楓

苔甜めて生き居る虫や雪の下

江戸絵人皆美しき四葩かな

水無月や草植ゑふやす庭造り

ちよぼちよぼと目鼻可愛し天瓜粉

犬蓼をまわりて句帖汚しけり