和歌と俳句

夏の雲

夏の雲朝からだるう見えにけり 一茶

夏雲濃し厩の馬に若竹に 蛇笏

夏雲のからみてふかし深山槇 蛇笏

簾の中に面照る人や夏の雲 かな女

牧水
夏雲の 垂りぬる蔭に うす青み 沼津より見ゆ 富士の裾野は

夏雲や山人崖にとりすがる 蛇笏

夏雲はまろき環をなし富士が嶺をゆたかに巻きて真白なるかも 牧水

夏雲崩るるうしろに甲斐の国あるや 鴻村

夏雲にただ真白な山の池 草田男

夏雲に焼岳の噴煙それかとも 野風呂

飛騨に湧く夏雲嶺を超えきたる 秋櫻子

大島に来て椿なし夏の雲 淡路女

炊煙と湧く夏雲と相交り 汀女

大隅に湧く夏雲ぞ目に恋し 鳳作

夏の雲竹葉ほぐして明るけれ かな女

幼どきかへりしごとし夏の雲 石鼎

あとしざりしつつすすみ居り夏の雲 石鼎

嶽離る夏雲みれば旅ごころ 蛇笏

夏雲湧けり妙義は岫もあらなくに 草田男

夏雲躄る妙義は音のなき山なり 草田男

わぎもこのほ句見て笑まし夏の雲 石鼎

昼も夜も真空に白し夏の雲 石鼎

空の色うるめど深し夏の雲 石鼎

夏雲観るすべての家を背になして 草田男

沖は夏雲クローバーに花咲く如く 草田男

夏雲の壮子時なるを見て泪す 誓子

夏雲の旺んに立てる飛騨の方 杞陽

夏雲に日々登高をおもふのみ 蛇笏

夏雲の下なる墓域生きて購ふ 誓子

朝よりの夏雲に描く子の笑眉 不死男

暁や夏雲の端のとびちぎれ 楸邨

夏の雲鸚鵡ひそかにゐたりけり 楸邨

夏雲とあらゆる巌の目鼻かな 楸邨

夏の雲槐の幹も寂びたりや 耕衣

夏雲のまぶしさ去らず歓喜仏 楸邨

夏雲高し壕舎巷をつくりゆく 林火

夏雲高し子をつれて海へ旅立つ日 林火