幔幕に鳴いてやめたる雨蛙
みつしよんの丘のじやがたらの咲く日かな
烈風の街燈に出づ灯蟲かな
一條の煤煙のもと皐月富士
セルを着て玉蟲色の鼻緒あり
住み残す矢車草のみづあさぎ
蜥蜴出て遊ぶを見れば常の如し
蜘蛛の圍やわれらよりかも新しく
假吊の風鈴しげく鳴りにけり
笹舟も高き舳よ水すまし
緑蔭やリラと呼ばれて行ける犬
さみだれや診察券を大切に
ちんどんや疲れてもどる夏の月
青芝の刈らるる芝のすぐ変り
三越を歩き呆けや花氷
蜘蛛の圍や朝日射しきて大輪に
夏痩をしてお使ひに顔見せし
扇風機合図の見えて動きけり
あるときの我をよぎれる金魚かな
梅干して人は日陰にかくれけり
揚羽飛びすぐ雨雲や三国山
炊煙と湧く夏雲と相交り
蓼折ればうすき知るべの發つ温泉宿
留守なりし蜘蛛ももどりぬ蚊喰鳥
河が呑む小石どぶんと蚊喰鳥