磯薄暑遊覧船はぽつりと来
鐡線花馬蹄の音のさしかかる
なほ北に行く汽車とまり夏の月
三方に蝶のわかれし立葵
いづこへか兜蟲やり登校す
ねむたさがからだとらへぬ油蟲
ねむたさの灯の暗うなる油蟲
日焼せしままわづらひの肌を脱ぎ
泳ぎ女の聲聞ゆほど蝉静か
言ひのこす用の多さよ柿若葉
みどり兒と蛙鳴く田を夕眺め
山の子のいつもひとりで雨蛙
病人を負うて一里や閑古鳥
すいかづらたまの揚羽の長くゐず
矢車草誰が夏帽も新しく
芋の芽のとりどり青く主とあり
川狩の子供ばかりに人だかり
夏草や母親のみな衣黒し
白扇を止むる間なしに頬こそげ
月日経ち松葉牡丹の町も好き
晩涼の子や太き犬いつくしみ
朝顔に口笛ひようと夏休
遠雷や睡ればいまだいとけなく
船蟲に濱の人出のみぢかさよ