夏草や君わけ行けば風薫る 子規
夏草や大石見ゆるところどころ 子規
夏草の上に砂利しく野道哉 子規
夏草や古井の底の水の音 虚子
茂吉
夕ひかる 里つ川水 夏くさに かくるる處 まろき山見ゆ
晶子
たけたかき 原の夏草 海辺の 少女おもへと 朝風わたる
赤彦
夏草の いよよ深きに つつましき 心かなしく きはまりにけり
夏草や驛の木立に捨て車 蛇笏
夏草に這上りたる捨蚕かな 鬼城
夏草や繭を作りて死ぬる虫 鬼城
牧水
夏草の なびける山に 真向ひて 今朝をさびしく 歩み居るかな
牧水
たちいでて 見る細庭の 夏草の 真ひるしなえて ひとのこひしき
野の起隆に月出てかなし夏の草 石鼎
赤彦
夏草は窓にとどけり籠りゐる一人ごころに堪ふるこのごろ
夏草に下りて蛇うつ烏二羽 虚子
夏草を搏ちては消ゆる嵐哉 普羅
夏草や後に消えし影法師 月二郎
夏草に石も上げ得ぬ我が力 虚子
牧水
土ほこり うづまき立つや 十あまり 荷馬車すぎゆく 夏草の野路に
夏草に通ひ路つけし釣師かな 喜舟
夏草に愛慕濃く踏む道ありぬ 久女
月光揺れて夏草の間を流れかな 久女
夏草のほとぼり冷むる月夜かな 草城
夏草に砕けて赤き煉瓦かな 草城
夏草に日落ちて馬車が迅くなる 草城
夏草や心中者の下駄二足 草城