炎天や水に磧に橋の影
風鈴やわが家へおろす天津風
夏の夜や橋桁焦がす船篝
夕立や音羽九丁を一筋に
一しきり月を燻せる蚊遣かな
初夏を乳房の筋の青さかな
店々へ顔かくし行く日傘かな
行水をかくし合ひけり家二軒
散るといふは火のこぼるゝや花柘榴
津の柳茂り極めぬ雲の峯
海道を衝くべき道の夏野かな
夏山や音の死たる淵を見る
翡翠の一蹴し去る杭かな
筋塀にこぼれつくしぬ桐の花
昼顔や忽ち乾く網の渋
中嶋を葉の攻寄する蓮かな
蕗の葉も井戸も眠りし真昼かな
篠山を突きたる声や時鳥
雨蛙青梅街道曇りけり
永く見て心静まりぬ水馬
夏草に通ひ路つけし釣師かな
紫陽花や風雨の中の藍微塵
歯に当てゝいよいよ青き実梅かな
芝原や仔細に見れば蟻の国
初夏やかくやにかける摺り生姜