和歌と俳句

野村喜舟

河骨の花を秘めける青田かな

青田より鯰を得たる夕餉かな

お祭の三島の道の青田かな

真清水や世に小峠の忘れられ

苔清水不動の滝と落つるかな

沢瀉を水の流るゝ浴衣かな

袂より団扇とり出す逢瀬かな

はたはたとくちなし染の団扇かな

噴井戸を店に持つかな心太

鹿の子は聖の沓をぬぶるかな

山のべに人疑はぬ鹿の子かな

空蝉や草のそよぎを落むとす

灯取虫畳の上を掃かれけり

蠅打の音の曇りの畳かな

雨蛙啼くや一面桑畠

からたちの刺を啼きけり雨蛙

蝸牛や畳を這へる風雅者

蛞蝓や南瓜の二葉美しく

山葵摺れ飯の炊きたて初松魚

栗の花糠雨なれど降りつゞけ

社よき加茂の田中の蓮かな

蓮の葉や入山式は雨に済み

なつかしや芝白金の麦の秋