和歌と俳句

野村喜舟

草刈の帯の赤きも卯月かな

横須賀やかんかん虫の暑さかな

護摩の火に天蓋ゆるゝ暑さかな

練雲雀夕日となりし筑波かな

僧正は護摩壇上や蠅の閑

葵より芥子より赤き金魚かな

釣をして病養ふ五月かな

夕立やうき濡髪をかきあげて

夕立や牧の仔馬の濡れまさり

真清水や楝が下に昔より

蔭祭鎌倉ばかり囃しけり

太平記戦永引く昼寝かな

牛込や八幡いくつ時鳥

み仏と蔀一重や時鳥

時鳥鳴くや魂持つ山の樹々

文車に源氏の嵩や時鳥

清らかに飼うて二匹の金魚かな

追分に饅頭蒸さるゝ若葉かな

方丈へ筧走らす若葉かな

吸物に茗荷きざむも五月かな

夏の夜の蕎麦の青きがよかりけり

釣りに出る品川沖や雲の峯

江戸川は鰻活すや夏の月