垢離場石花桐の風ほてりして 碧梧桐
宮沢賢治
風木木の梢にどよみ桐の木に花さくいまはなにをかいたまん
花桐や敷布くはへて閨の狆 蛇笏
花桐や産屋に懸けし聖母の図 麦南
赤彦
若葉のかげ漸く深し桐の花日ねもす落ちて人はかへらぬ
桐の花日かげを為すに至らざる 虚子
四五枚の葉に立据はり桐の花 泊雲
筋塀にこぼれつくしぬ桐の花 喜舟
花桐の紫はしる雷雨かな 亞浪
花桐や海は音なく照りまさり 亞浪
花桐の香や嬌声の路阻む 亞浪
しづかさや実がちに咲きし桐の花 水巴
花桐に草刈籠や置きはなし 蛇笏
花桐や重ね伏せたる一位笠 普羅
ひとり帰る道すがらの桐の花おち 碧梧桐
桐の花さく山畑の朝の吹きおろしなる 碧梧桐
紫や朝風に散る桐の花 草城
桐落花掃く夕月の草廬かな 麦南
白秋
寺おほき 山はこの空 寺ごとに 桐の花咲きて 匂ふこの空
白秋
花ふかむ 桐の木群の とのぐもり こもれる君が 空もわかなく
白秋
とのぐもり 紫こもる 桐のはな 暮合の空に けふもなりぬる
桐の花散りひろごれり寺静 たかし