和歌と俳句

河東碧梧桐

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

ありたけのきのふからのをむぐに交れり

妻に慊らぬきる日のねむし

薔薇剪りに出る青空の谺

父はたゞ一人なる灌仏に行きたり

梅雨の地面が乾く立ちつくす彼ら我ら

彼ら一斉に口々に叫ぶ合歓は花なし

植木の針金が日盛りの日に錆びて

月見草の明るさの明方は深し

ぎつしりな本其の下のどんぞこの浴衣

麦秋の馬に乗る皆が長い足を垂れた

姉は生え際ののまゝにて

我が持つ一桶の水と芍薬の莟

柿の花ほろほろこぼれおつる下に参りて

暗く涼しく足の蚊を打つ音を立てた

端居して足の蚊を打つ音立てた

二人の胡蓙敷きのべて清水の広場

山開きの神主のひざまづく土

麦笛を吹く曇り出した風のそひ来る

通りぬけをする夜の人声の時分

薔薇をけふも書きついで色の淋しく

パン屋が出来た葉桜の午の風渡る

時鳥川上へ鳴きうつる窓あけてをる

昼顔の地を這うてゐる花におしまひの水流す

ひとり帰る道すがらの桐の花おち

一もとの折れて菖蒲切り花にする朝の雨ふる