梅干にすでに日蔭や一むしろ
夏羽織一刀腰に医師かな
分限者の己が絵像や更衣
夏断して仏の痩を忍びけり
鵜つかひや忍冬咲いて昼の宿
乳鉢に紅すりつぶすいちごかな
闇中に山ぞ峙つ鵜川かな
干梅の紅見れば旱雲
夏痩の文長々と物しけり
馬に乗る人を彼方に夏野かな
虫干や返す人亡き書一函
蝉涼し朴の広葉に風の吹く
朝曇隈なく晴れぬ小鮎釣
夕顔や柑子の葉越し白き見ゆ
明き星傾く空や時鳥
高根より下りて日高し鮓の宿
辻能の斑女が舞や夏柳
水鶏来し夜明けて田水満てるかな
馬独り忽と戻りぬ飛ぶ蛍
灯あかき紙端に落る蛍かな
空をはさむ蟹死にをるや雲の峰
今頃を代馬戻る夏の月
簀の中のゆるき流れや水馬
大利根の水守る宮や花樗
雲晴れて解夏の鶯聞えけり