蜘の子や親の袋を噛んで出る
中空にはやて吹くらん雲の峯
河骨の花に集る目高かな
黒船の動き出しけり雲の峯
短夜の大仏を鋳るたくみかな
筆筒に団扇さしたる机かな
五月雨に学校やすむ小村かな
栗の花こぼれて居るや神輿部屋
夏帽を吹きとばしたる蓮見かな
寺による村の会議や五月雨
人の国に来てぞ似つかぬ衣更
すべり落つる薄の中の蛍かな
乳あらはに女房の単衣襟浅き
夏木立深うして見ゆる天王寺
短夜や町を砲車の過ぐる音
舞殿や薫風昼の楽起る
愕然として昼寝さめたる一人かな
掛香や派手な浴衣の京模様
清浄と夏書の一間塵もなし
薬草を摘み居れば園の孔雀鳴く
黒谷の松や蓮さく朝嵐
菖蒲太刀前髪の露滴たらん
蘭湯に浴い錦を着たりけり
砲車過ぐる巷の塵や日の盛り
乳牛の角も垂れたり合歓の花