貴ぶねへも火はいたゞかで飛螢 也有
我やみへもどる夜明のほたる哉 也有
憎ひ蚊と同じ盛のほたる哉 也有
橋の下ちぎれて通る螢かな 也有
狩衣の袖のうら這ふほたる哉 蕪村
学問は尻からぬけるほたる哉 蕪村
さし汐に雨の細江のほたる哉 蕪村
水底の草にこがるるほたる哉 蕪村
掴みとりて心の闇のほたる哉 蕪村
ほたる飛ぶや家路にかへる蜆うり 蕪村
手習の顔にくれ行くほたるかな 蕪村
淀舟の棹の雫もほたるかな 蕪村
雨の夜や猶おもむろに行蛍 召波
盃のうへに吹るゝほたるかな 暁台
蛍火や風の笹山吹おろし 暁台
むら松やきえんとしては行螢 白雄
飛蛍あれといはむもひとりかな 太祇
うつす手に光る蛍や指のまた 太祇
蛍火や岸にしづまる夜の水 太祇
手から手へわたしわづらふ蛍かな 太祇
とりにがす隣の声や行ほたる 太祇
薮かげやさゆりの花にとぶ蛍 青蘿
笹の葉の夜散ほどや飛ほたる 青蘿
あるじなき几帳にとまる蛍かな 几董
水うみの低きに就て行ほたる 几董
盃に散れや糺のとぶほたる 一茶
ほたるよぶよこ顔過るほたる哉 一茶
舟引の足にからまる蛍哉 一茶
手の皺が歩み悪いか初蛍 一茶
夕されば蛍の花のかさい哉 一茶
さくさくと飯くふ上をとぶ蛍 一茶
行な蛍都は夜もやかましき 一茶
馬の草喰ふ音してとぶ蛍 一茶
本町をぶらりぶらりと蛍哉 一茶
わんぱくや縛れながらよぶ蛍 一茶
はつ蛍つひとそれたる手風哉 一茶
逃て来てため息つくかはつ蛍 一茶
大蛍ゆらりゆらりと通りけり 一茶
筏士の箸にからまる蛍哉 一茶
大家根を越へそこなひし蛍哉 一茶