和歌と俳句

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

万筋の芒流るる蛍かな 茅舎

蛍火の瓔珞たれしみぎはかな 茅舎

隠り沼にひそみて飛ばぬ蛍かな 草城

瀬がしらに触れて高飛ぶ蛍かな 草城

山容も分かぬ闇夜や蛍飛ぶ 草城

篁をつひに出でざる蛍かな 草城

草に落ちし蛍に伏せし面輪かな 久女

水荘の蚊帳にとまりし蛍かな 久女

殪つさまに光りもぞする蛍かな 蛇笏

消ゆ長し進む迅し田の夕蛍 石鼎

瀧しぶきほたる火にじむほとりかな 蛇笏

夕べはや大樹によりし蛍あり 石鼎

麻崖碑を匐落つ蛍ありぬべし 青畝

青梅をぬうてさまよふ梅雨蛍 石鼎

濡笹をふりて蛍に歩きけり かな女

蛍火の水に在ともいひつべし 夜半

下りまじき光や高う行く蛍 水巴

蛍ゐて蘆の一穂の見ゆるかな 草城

蛍火の細藺にすがる水あかり 秋櫻子

朝ぼらけ水隠る蛍飛びにけり 不器男

一つ籠になきがら照らす蛍かな 水巴

蛍火や山のやうなる百姓家 風生

へろへろとあふがれ上る蛍かな 青邨

瀧水に現れそめし螢かな 虚子

積繭に吹かれ入りたる蛍かな 石鼎

塊りて紗にうごき居る蛍かな 石鼎

籠の内の紗をもえのぼる蛍かな 石鼎

森の木をはなれとびけり夕蛍 石鼎

白秋
闇を來て われはいきづく 小夜ふかく 螢の光 田の面移ろふ

白秋
月の出や 稲葉爽立つ 夜嵐に 螢あふられ 田の面立ち消ゆ

白秋
月夜風 あふる田づらを 消ゆと見し 螢は高く また光るあはれ