和歌と俳句

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

蛍飛ぶ筑後河畔に佳人あり 虚子

蛍火を愛して口を開く人 耕衣

死蛍に照らしをかける蛍かな 耕衣

蛍よぶ昔も今も同じ唄 立子

親一人あとにのこりし蛍かな 万太郎

蛍火や昃れば僧衣真つ黒く 鷹女

蛍火夜々修道院を乱れ超ゆと 草田男

ほたるとぶ光りいろめく宵の口 蛇笏

天駆くるさま蛍ゆく室生川 青畝

蛍狂ふ女人高野の夜の雨 青畝

はかなきは女人剃髪蛍の夜 蛇笏

大空のうつろよぎりし蛍かな 青畝

蛍火を仰ぎ砂湯にひそまれる三鬼

ねがへりのらくにうてたる蛍かな 万太郎

さらさらと夜のものかるき蛍かな 万太郎

蛍とび夫婦おろかに老いしかな 万太郎

一歩にてをどる釣橋蛍の夜 青畝

蛍火や峰に汽車おく湯檜曾駅 不死男

深山沼ここを離れぬ蛍とぶ 林火

気落ちして足拭きをるや蛍くる 不死男

流蛍の自力で水を離れ飛ぶ 誓子

吾が頭上避けて蛍火通りたり 誓子

蛍火を容れ自動車を蛍籠 誓子

放つ蛍調度の隙に墜ちし後 悌二郎

鏡面にひかりを重ね蛍落つ 悌二郎

蛍火が流る岩間を通り抜け 誓子

蛍絶え恍惚世界消え畢んぬ 悌二郎

蛇籠の目ふかく落ちたる蛍かな 青畝

蛍の火川波けふの形なす 静塔

稲てらすさなかの蛍抓みとる 静塔

流蛍の上蛍火のみくだる 静塔

国東の佛ぞくらき蛍かな 青畝

玄室に蛍のいかる飛鳥かな 青畝

雨多き火の国なりし蛍かな 青畝

速玉の森に火こもる蛍かな 青畝

光洩るその手の蛍貰ひけり 汀女

蛍とび早寝あやしむ家もなし 汀女

つと逃げし蛍の闇のみだれかな 汀女

蛍火の決意急転換に知る 誓子

川渡りして来し蛍火の捕へらる 誓子

星よりも明蛍火の生ける火は 誓子

無明より再びかへす蛍かな 青畝

蛍火の極限の火は緑なる 誓子

丹波への夜道が通る蛍谿 誓子

落蛍俯伏せのまま火を点す 誓子

遠き灯は島原城か蛍狩 秋櫻子

蛍火が照らす細かき羽使ひ 誓子

蛍火が星の代りに天降り来る 誓子