鯉幟折目のつきしまま靡く
キヤムプ畳みて扁平の布となる
登り来し月山雲の香がちがふ
月読の国へ月山より登る
滝川の中行く登山道なれば
登山口鳥居の額の俯向くも
登山道一歩より急天まで急
鯉幟風に折れ又風に伸ぶ
蛍火が流る岩間を通り抜け
眼を凝らす残雪なりや残雪なり
残雪も寄り合ふ谷の寄り合ひに
雪渓にゐしただ一人忘られず
好きなもの高嶺にもあり蠅たかる
襞あればそこにて青嶺雲作る
三つ青嶺裾曳く一つ裾野なり
自らを主として三座とも青嶺
山上湖掌にて平して舟遊び
水を脱ぎ脱ぎ噴水の直立す
水盤のぐるりに月を滴らす
月よりも上空を飛ぶ白鳥座
月出でていまだ五重の塔越さず
西までの天路月にも遙かなり
雲霧遊ぶよ月山の尾根を越え
霧の海琵琶の形と思ひ見る